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「支援される側」から「共に地域を作る人」へ。ハンドブックをきっかけにつくりたい、これからの社会のかたち

「医療的ケアのあるお子さんやご家族は、なかなか旅行に行けないんです」
「そうなんだ、どうして?」

その理由が一言では語れないもどかしさを抱えながら、日々活動をしてきました。

今回のアンケートは、全国医療的ケアラインに参加する家族グループのみなさんや、SNSをきっかけに見つけてくださった方が、PTAや家族会の中でどんどんシェアをしてくださったことで、想像以上に多くの声が集まりました。

集まった声の中で、特に多くの方が挙げていたのが「おむつ替えのスペースがない」「車いす駐車場の情報が不足している」という困りごとでした。

これは、私自身が日頃ご家族と接する中でよく耳にしたことであり、Try Angleでおでかけイベントを企画するたびに向き合ってきたことでもあります。これまでご家族から伺ってきた困りごとを可視化する意義を感じながら、それ以上に、一人ひとりが日々どれほどこの壁と向き合ってきたのかを、あらためて突きつけられるような思いでした。

一方で、アンケート調査ではこんな声もいただきました。

「建物や施設、お手洗い、身障者駐車場など環境の整備も大事ではあると思いますが、ハード面を全て整えることは、お金や環境、面積など色々な面が関連してくるため難しいと思っています。しかし、方法にこだわりすぎないこと、お互いにコミュニケーションを取り合い、環境を変えずにできることを探していくという考え方も大切にしていけたらと思っています。」

こうしたお声に、私はとても共感しています。

困りごとを解決することと、完璧な整備や対応を求めることは、実は同じではありません。
すでに出来上がっている建物を、簡単に作り変えることはできない。
どこも人手不足と言われる社会の中で、万全の対応をするには難しさもあります。

でもこれまで重ねてきた医療的ケア児ご家族の「宿泊体験」では、畳の上にタイルカーペットを敷いてバギーでも移動しやすくしたり、コートハンガーを点滴スタンドの代わりにしたり、朝食ビュッフェで提供されているオムレツを、さらに食べやすいようにミキサーにかけてくださるなど、スタッフの方のあたたかな対応力も拝見してきました。

そして、医療的ケア児ご家族からは、普段のお家での過ごし方をスタッフの方に伝えていただくことで、貸し出し備品を追加していただいたり、スタッフの方が対応できる範囲を拡大したり、現状の施設の状況でもアピールポイントになる部分を話し合ったりしてきました。私たちが目指したいのは、「これができていないからダメ」という指摘ではなく、旅する人と迎える人の間での「対話をしながら、今できることを一緒に探す」という関係づくりです。

今回のハンドブックも、その対話の最初の一歩となる資料でありたいと思っています。

そしてもう一つ、私が本当に願っていることがあります。

それは、医療的ケアのある方やそのご家族が、「支援される側」としてだけでなく、「共に地域を作る人」として、社会の中にいる状態です。観光の現場やまちづくりに、医療的ケア児の保護者が働きながら環境改善に声を上げていたり、大人になったケア児本人が観光の仕事に携わっていたり。そんな景色が当たり前になったとき、ユニバーサルシートのような設備も、特別なものではなく、社会にごく自然に必要なものとして整備されている。私はそんな未来を作っていきたいと本気で思っています。

その一歩として、私たちはこれから「医療的ケア児者の旅を歓迎する地域」を、皆さんと一緒につくっていきたいと考えています。
実際にどんな場所がおすすめか分からず、行き先を探したり施設に問い合わせたりする負担は、今回の調査でも多くのご家族が抱えていることが分かりました。

この調査で集まった声には、地域が誰にとっても訪れやすい場所になっていくための、たくさんのヒントが詰まっています。困りごとを解決すべき対象として捉えるだけでなく、医療的ケアのある方やご家族を、地域の魅力や工夫を一緒に考えてくれる仲間として迎え入れる。そんな地域が増えていくことも、私たちが目指したい未来です。
このハンドブックは、そのすべての始まりの一歩です。
どうぞ、力を貸してください。

一般社団法人Try Angle
代表理事 須田麻佑子